双極性障害(躁うつ病)で障害年金は受給できる?認定基準と申請のポイント
双極性障害(躁うつ病)は、障害年金の対象となり得る傷病です。ただし、診断を受けたことだけで支給が決まるわけではありません。初診日や保険料の納付要件に加えて、症状の経過や日常生活・仕事への影響が確認されます。
特に双極性障害では、調子のよい時期の様子だけでなく、症状が変動する中でどのような支障や援助があるかを伝えることが大切です。この記事では、ご本人とご家族が申請前に整理したいポイントを説明します。
更新日:2026年10月16日
双極性障害は障害年金の対象になる?
双極性障害による障害の状態は、精神の障害のうち、気分(感情)障害の認定の考え方に沿って確認されます。年金の審査では、現在の状態だけでなく、症状の経過と日常生活への影響を考慮することとされています。
そのため、「受診した日は落ち着いていた」「家族以外には困っている様子が伝わりにくい」といった場合も、普段の状態を具体的に整理することが重要です。一方、病名や通院年数だけで受給できるとはいえません。
症状がいつ現れ、どのくらい続き、生活や仕事にどのような影響があったかを、通院歴などと合わせて振り返りましょう。よい時期・悪い時期の両方を含めることで、経過を伝えやすくなります。
受給するためには何を確認する?
まず、障害の原因となった傷病で初めて医師の診療を受けた日と、その時点の加入制度を確認します。初診日が厚生年金の加入中にある場合には障害厚生年金を、国民年金加入中などの場合には障害基礎年金を検討します。
保険料の条件も重要です。原則は、初診日の前日時点で、初診月の前々月までの加入期間のうち、納付済期間と免除期間が合計3分の2以上あることです。2036年3月31日までの初診で、初診日に65歳未満なら、直近1年間に未納がないという特例もあります。年金制度に加入していない20歳前の初診では、障害基礎年金の納付要件は不要です。
現在働いていなくても、初診当時の記録が判断に関わります。反対に、現在厚生年金に加入しているから必ず障害厚生年金になるわけでもありません。
出典:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」
1級・2級・3級の認定では何が見られる?
等級は、病状と生活・労働への制限などを総合して判断されます。気分(感情)障害の認定基準には、症状が持続したり繰り返したりする場合について、援助の必要性や日常生活・労働の制限に応じた例示があります。
| 等級 | 認定基準の考え方を踏まえた目安 |
|---|---|
| 1級 | 高度の病状が持続・反復し、常時の援助が必要 |
| 2級 | 病状が持続・反復し、日常生活が著しく制限される |
| 3級 | 病状が持続・反復し、労働が制限される |
障害基礎年金は1級・2級、障害厚生年金は1級から3級が対象です。上表は自己判定のための点数表ではありません。食事、通院、お金の管理、対人関係などの具体的な状況と、受けている援助を確認する必要があります。
出典:日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」
症状の波はどのように伝える?
「調子がよい日もある」という説明だけで終わらず、状態が変わる頻度、続く期間、その間の暮らしの変化を整理しましょう。記憶だけでは整理が難しい場合は、カレンダーや通院時のメモなど、手元にある記録を振り返る方法があります。
たとえば、眠る時間や外出の状況、お金の使い方、予定を続けられるかどうかなど、本人や家族が実際に把握している変化をメモします。生活への影響がない時期についても、事実に沿って記載します。
| 整理する点 | メモする内容の例 |
|---|---|
| 時期・期間 | いつ頃から状態が変わり、どの程度続いたか |
| 生活への影響 | 食事、身支度、支払い、外出などで何が難しかったか |
| 周囲の対応 | 家族や支援者が、何をどのくらい手伝ったか |
| 就労への影響 | 欠勤、業務変更、勤務時間の調整などがあったか |
これは記録の整理例であり、すべての方に同じ症状があるという意味ではありません。受給のために症状を大きく表現するのではなく、診察の場で伝わりにくい事実を補うことが目的です。
最初の診断がうつ病でも初診日は変わる?
診断名が双極性障害に変わった日が、必ず初診日になるとは限りません。初診日は、障害の原因となった傷病について初めて医師の診療を受けた日です。以前の診療との関係を、経過や医療記録などから確認します。
最初はうつ病などと説明され、その後に診断名が変わった場合、最初の医療機関名、受診理由、転院の経緯、治療内容などを整理しておくと確認が進めやすくなります。精神科より前に内科などを受診していた場合も、その経過を伝えてください。
病名が違うという理由だけで、古い受診歴を省くことは避けましょう。一方、過去の受診がすべて今回の初診日になるわけでもありません。傷病との関係を含めた個別の確認が必要です。
出典:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」
働いている場合、どんな情報を整理する?
双極性障害がありながら働いている場合も、就労の事実だけで判断されるわけではありません。仕事の内容や継続状況、職場で受ける援助、療養状況などが確認されます。
勤務している日数に加えて、勤務を続けるために必要な条件を整理しましょう。業務を限定してもらっている、体調に応じて勤務時間を変えている、周囲に確認しながら作業しているなど、実際の配慮を具体的に記録します。
体調の変動と休職・復職の時期が対応している場合は、時系列で並べると経過が伝わります。「働けるかどうか」の二択で考えるより、どんな支えがあれば働けるのか、生活全体にどのような影響が残るのかを確認することが大切です。
診断書と申立書はどう準備する?
診断書は医師が医学的に判断して作成し、病歴・就労状況等申立書は本人側で経過や暮らしの状況を整理する書類です。役割が異なるため、同じ文章をそのまま繰り返すだけでは、必要な情報が伝わらないことがあります。
医師には、診察時に伝えきれていない生活上の困難や、家族の援助を具体的に伝えます。「この等級になるように書いてほしい」ではなく、判断の前提となる事実を共有しましょう。
申立書では、通院している期間だけでなく、受診していなかった期間も含めて、発病から現在までの経過を整理します。本人の記憶と医療機関の記録に違いが見つかったときは、どちらかへ無理に合わせず、根拠を確認して整理してください。
出典:日本年金機構「病歴・就労状況等申立書の提出にあたって」
申請はいつから、どの順番で進める?
障害の状態を確認する基準となる障害認定日は、原則として初診日から1年6カ月を経過した日です。例外や20歳前の初診の扱いもあるため、まず年金事務所などで対象時期と請求方法を確認します。
- 初診に至るまでの経過と通院歴を整理する。
- 加入・納付記録、必要な診断書の時期を確認する。
- 医療機関へ必要な証明書・診断書を依頼する。
- 症状の波や生活・就労状況を申立書にまとめる。
- 書類の内容を確認し、年金請求書とともに提出する。
診断書には対象とする時期があるため、先に取得すればよいとは限りません。精神的な負担が大きいときは、家族や専門家に整理を手伝ってもらいながら進めましょう。
相談前のチェックリストは?
- 初めて受診した時期・医療機関を振り返った。
- 診断名の変更と転院の経緯を整理した。
- 調子のよい時期・悪い時期の両方を確認した。
- 家族や職場が行っている援助を書き出した。
- 休職・復職や欠勤の経過を確認した。
すべてが埋まってから相談する必要はありません。不明な点も含めて伝え、どこから確認するかを決めることが第一歩です。
よくある質問
入院歴がなくても相談できますか?
できます。入院歴の有無だけで決まる制度ではありません。通院や在宅での療養状況、日常生活・就労の制限などを確認します。
通院先が何度も変わっていても相談できますか?
できます。医療機関ごとの受診時期と転院理由を分かる範囲で整理してください。日付が不明なときは推測で確定せず、手元の資料や医療機関への照会などで確認します。
家族が申立書を書くのを手伝ってもよいですか?
本人だけでは作成が難しい場合、家族などが代筆することも想定されています。本人の状況を正確に確認し、代筆者の氏名や続柄など、様式で求められる事項を記載してください。
広島で障害年金の申請を相談したい方へ
社会保険労務士法人 江口事務所では、広島県内の障害年金申請のご相談を承っています。「自分が対象になるか分からない」「何から準備すればよいか知りたい」という方も、現在の状況をお聞かせください。
電話:082-224-4514 受付時間:平日9:00〜17:30(土曜日の面談は応相談)
関連記事
出典
- 日本年金機構:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額
- 日本年金機構:障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額
- 日本年金機構:障害認定基準 第8節 精神の障害
- 日本年金機構:障害基礎年金を受けられるとき 必要書類
- 日本年金機構:病歴・就労状況等申立書の提出にあたって
- 日本年金機構:年金用語集 障害認定日
- 日本年金機構:障害年金の診断書を作成する医師の方へ
本記事は一般的な情報提供を目的としています。受給の可否や等級、必要書類は個別の状況により異なります。具体的な申請は、最新の情報を確認のうえ、年金事務所や社会保険労務士にご相談ください。(更新日:2026年10月16日)












