介護保険は車いすや介護ベッドなどの「サービス・用具」を給付する制度である一方、障害年金は現金を直接給付する制度です。介護保険だけではカバーしきれない住宅改修の自己負担分や日々の生活費を、障害年金が補う役割を果たせることがあります。ただし、受給には初診日や保険料納付要件などの条件を満たす必要があり、審査には専門的な知識が求められます。
こんなお悩みはありませんか?
- 家族が脳梗塞で倒れ、退院後の生活費・介護費用に不安を感じている
- 介護保険だけでは福祉用具や住宅改修の費用をまかないきれず困っている
- 「障害年金」という言葉は知っているが、家族の脳梗塞でも対象になるのか分からない
- 高次脳機能障害や麻痺などの後遺症がある家族の代理で手続きを検討している
- 介護と仕事の両立で、経済的にも精神的にも負担を感じている
この記事の目次
家族が脳梗塞で倒れたら、退院までに何をしておくべきか
家族が脳梗塞で倒れたとき、治療やリハビリと並行して意識しておきたいのが「初診日」の記録です。初診日とは、脳梗塞について初めて医師の診察を受けた日のことで、障害年金の受給要件を満たすかどうかを左右する重要な情報になります。
入院・リハビリ期に確認しておきたいこと
- 最初に受診した病院名・診察日(初診日の証明に必要)
- 転院した場合は、転院の経緯と各病院の受診期間
- リハビリの経過や、退院時点での後遺症の状態
退院後の生活を左右する「障害認定日」という考え方(脳血管疾患特有の特例)
障害年金の審査対象になる時期は、原則として初診日から1年6か月を経過した日(障害認定日)です。
在宅介護に切り替わると、何にどれくらいお金がかかるのか
在宅介護には、介護保険で賄える部分と、自己負担が発生する部分があります。公益財団法人生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」(2024年度)によると、介護にかかる一時費用(住宅改修や介護用ベッド購入等)の平均は47.2万円、月々の費用は平均9.0万円、在宅介護に限ると月平均5.3万円という調査結果が示されています。※これは脳梗塞に限定した数値ではなく、介護全般の平均である点にご留意ください。
福祉用具(車いす・介護ベッド等)は介護保険でどこまで賄えるか
介護保険の福祉用具貸与は、厚生労働大臣告示により以下の13品目に限定されています。
| 区分 | 対象品目 |
|---|---|
| 主な貸与品目 | 車いす(付属品含む)、特殊寝台(介護ベッド、付属品含む)、床ずれ防止用具、体位変換器、手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえ、認知症老人徘徊感知機器、移動用リフト、自動排泄処理装置 |
住宅改修(バリアフリー化)にかかる費用と支給限度額
手すりの設置や段差解消などの住宅改修には、介護保険から支給限度基準額20万円までの給付があります。20万円の工事を行った場合、自己負担1割の方で2万円、2割の方で4万円が目安です。20万円を超えた部分は全額自己負担となります。
介護保険だけではカバーしきれない出費
- 食費・光熱費などの生活費
- 介護保険の支給限度額を超えた分の福祉用具・住宅改修費
- 通院にかかる交通費や医療費
- 見守り機器など、介護保険の対象品目に含まれない用具
これらは家計から直接支出することになり、介護が長期化するほど負担が積み重なっていきます。
介護保険と障害年金は何が違うのか
介護保険と障害年金は、混同されがちですが目的も仕組みも異なる制度です。
| 項目 | 介護保険 | 障害年金 |
|---|---|---|
| 給付の形 | サービス・用具の現物給付 | 現金給付 |
| 対象年齢 | 原則65歳以上(特定疾病は40歳以上) | 原則20〜64歳(要件を満たせば範囲外も可) |
| 財源 | 保険料+公費 | 年金保険料(国民年金・厚生年金) |
| 申請窓口 | 市区町村の介護保険担当課 | 年金事務所・年金相談センター |
家族の脳梗塞、障害年金の対象になるのか
脳梗塞の後遺症によって日常生活や仕事に著しい制限がある場合、障害年金の対象となる可能性があります。
対象となりうる後遺症(肢体麻痺・高次脳機能障害・言語障害等)
脳梗塞の後遺症には、手足の麻痺(肢体障害)のほか、記憶力・判断力の低下や感情のコントロールが難しくなる高次脳機能障害、言葉が出にくくなる言語障害、飲み込みが難しくなる摂食嚥下障害などがあります。
脳梗塞で障害年金を受給するための要件
- 初診日要件:脳梗塞について初めて受診した日を明確にできること
- 保険料納付要件:初診日の前日時点で、一定期間の保険料を納付(または免除)していること
- 障害状態要件:障害認定日または現在の症状が、障害等級(1〜3級、障害手当金)に該当する程度であること
脳梗塞の後遺症別・障害等級の目安
| 後遺症の種類 | 想定される等級の目安 |
|---|---|
| 高次脳機能障害(記憶力・判断力の著しい低下、日常生活全般に援助が必要) | 1級〜2級 |
| 肢体の麻痺(歩行・移動に大きな制限) | 1級〜3級 |
| 言語障害(発語がほとんど困難) | 2級〜3級/障害手当金 |
| 摂食・嚥下機能の障害 | 3級/障害手当金 |
※実際の等級は診断書の内容や日常生活の状況を総合的に審査して決定されるため、あくまで目安としてご覧ください。
障害年金は実際いくらもらえるのか|介護費用と並べて見る
令和8年度(2026年度)の障害基礎年金の金額は、1級が年額約105万9,120円(月額約8万8,260円)、2級が年額約84万7,300円(月額約7万608円)です。厚生年金に加入していた方は、これに報酬比例部分の障害厚生年金が上乗せされます(金額は加入期間・給与により個人差があります)。
| 月あたりの目安 | |
|---|---|
| 在宅介護でかかる費用(生命保険文化センター調査・介護全般の平均) | 約5.3万円 |
| 障害基礎年金2級 | 約7.1万円 |
| 障害基礎年金1級 | 約8.8万円 |
当事務所の脳梗塞での受給事例
奥様が脳梗塞を発症し、懸命なリハビリの末も片麻痺の後遺症が残り、休職期間満了で退職を余儀なくされたケース。ご主人が単身赴任中で手続きが難しいとのご相談を受け、委任状の取得から受診状況等証明書の取得、病歴・就労状況等申立書の作成までを代行し、障害厚生年金1級(約187万円)の受給が決定しました。
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運転中に体の違和感を覚えて救急搬送され、脳梗塞と診断された方のケース。左半身に運動麻痺が残り、リハビリで快方に向かっていたところ、途中で穿孔性腹膜炎を発症してリハビリが中断してしまいました。年金事務所に何度も通うことが難しい状態だったため、当事務所がサポートしました。脳梗塞については事後重症、穿孔性腹膜炎については認定日請求として、それぞれ診断書1枚ずつを主治医に作成いただき、リハビリが中断・悪化していった経緯を病歴・就労状況等申立書に詳細にまとめて請求しました。
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脳梗塞を発症して仕事ができなくなったことをきっかけに、焦燥感・不眠・抑うつ気分などの症状が出現し、うつ病と診断された方のケース(脳梗塞の身体的な後遺症ではなく、脳梗塞を契機に生じた精神症状での請求です)。ご本人が広島市から離れた場所に住んでおり通院先も遠方だったため、妹様からのご依頼を受けてご自宅に伺い面談を実施。日常生活の状況を詳細にヒアリングして医師への参考資料を作成し、病歴・就労状況等申立書を整えた結果、障害基礎年金2級が決定。支給額は792,100円(4年余の遡及分として約360万円)でした。
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介護をしながら・働きながらでも申請できるのか
「働いているから対象外」「介護保険を使っているからもう申請できない」という思い込みで、申請をあきらめてしまうケースは少なくありません。障害年金は、就労の有無そのものではなく、後遺症による日常生活・就労上の制限の程度によって審査されます。
また、ご本人が手続きを行うことが難しい場合は、家族が委任状や本人確認書類を用意した上で、代理人として申請手続きを進めることも可能です。
よくある質問
脳梗塞で要介護認定を受けていれば、障害年金も自動的にもらえますか?
いいえ、自動的にはもらえません。要介護認定は介護保険の制度、障害年金は年金制度であり、審査基準も申請窓口も別です。障害年金を受け取るには、年金事務所等への別途の請求手続きが必要です。
高次脳機能障害だけでも障害年金の対象になりますか?
はい、対象となる可能性があります。手足の麻痺がなくても、記憶力・判断力の低下などの症状があれば、精神の障害の認定基準に基づいて審査されます。
家族が代理で障害年金の申請手続きを行うことはできますか?
はい、可能です。委任状や本人確認書類などを用意することで、家族が代理人として手続きを進めることができます。
介護保険の福祉用具貸与と障害年金は、同時に利用できますか?
はい、同時に利用できます。介護保険はサービス・用具の現物給付、障害年金は現金給付という異なる性質の制度のため、要件を満たせば両方を併用できます。
障害者手帳を持っていなくても障害年金は申請できますか?
はい、申請できます。障害者手帳と障害年金は認定基準や目的が異なる別々の制度のため、手帳がなくても、障害年金の受給要件を満たしていれば申請可能です。
まとめ|介護費用の不安は、障害年金という選択肢を知ることから
- 脳梗塞の後遺症は、肢体麻痺だけでなく高次脳機能障害や言語障害でも障害年金の対象となる可能性があります
- 介護保険は現物給付、障害年金は現金給付という異なる役割を持ち、併用が可能です
- 福祉用具・住宅改修には介護保険の給付上限があり、それを超える出費や生活費は自己負担になりやすい部分です
- 障害年金の受給には初診日・保険料納付要件・障害状態要件があり、個別の状況確認が欠かせません
介護の負担に加えて経済的な不安を一人で抱え込まず、まずは制度を知ることから始めてみてください。ご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。












